Adobe Technical Communication ハイライト1

はじめに

Adobe FrameMaker(以下、FM)の新しいバージョンがリリースされました。ご存じの通り最近のFMはリリースのタイミングが比較的短スパンなので、新しいバージョンがリリースされたことに大きな驚きはありませんが、今回のリリース内容に関してはいくらかのサプライズを感じました。これまであまり手の付けられてこなかった、それでも使い勝手に影響が大きいと思われる部分に機能拡張が図られていたからです。
その思いをAdobeスペシャルイベントでお知らせする機会をいただけたので、弊社のWebサイトでも関連記事をリリースさせていただきます。(当日の資料と説明内容は以下のURLからご確認いただけます)
https://adobe-special-event-2020-japan.meetus.adobeevents.com/agenda/
ぜひ以下の内容をご参照いただき、FM 2020へのご移行をご検討いただければ幸いです。また、私たち日本ユニテックは引き続きFMソリューションのパイオニアとして活動を続けてまいりますので、ご支援の機会を頂戴できることを願っております。

FM 2020の新機能 その1

それでは、新機能のご紹介です。アドビのサイトでは以下のアドレスで変更点がまとめられており、説明ビデオも用意されています。残念ながらビデオは英語ですが、UIを追っていけば理解できる部分も多いかと思いますので、一度ご覧になることをお勧めいたします。
また、以下のサイトでは2015/2017/2019とリリースされてきた内容が比較されていますので、こちらも検討に役立つ資料かと思います。自分のワークフローにインパクトがあるか、お確かめいただければと思います。

さて、FM 2020の新機能をリストにすると以下のようになります。

  • 構造化文書関連
  • 一新されたツリービューと構造図
  • WYSIWYGとマージされ簡略化されたビュー
  • Word文書のDITAMAPへのよりスムーズな読み込み
  • Markdownの構造化DITAコンテンツへの読み込み
  • DITAマップのドキュメントとツリーの同時表示
  • 非構造化文書関連
  • 言語固有の引用符の自動調節
  • ナビゲーションビュー
  • 文頭のみ大文字のサポート
  • FM Documentのスプリッター
  • すぐに使用できる翻訳のサポート
  • 翻訳をしやすくするXLIFFの事前分割
  • マルチメディア対応
  • オンラインビデオのサポート
  • DITA1.3 & LwDITAによるリッチメディアの挿入
  • コラボレーション対応
  • オンラインレビュー(TCS)
  • (Adobe Experience Manager とのシームレスな統合)
  • PDF対応
  • PDF/AおよびPDF/Xに準拠したPDF
  • PDF内へのPDFの埋め込み
  • PDFのコンテンツアクセシビリティの向上

この中で、冒頭で述べた「あまり手の付けられてこなかった」「使い勝手に影響が大きいと思われる部分」に注目して、独断でピックアップした新機能を以下にご紹介したいと思います。

1. 文書表示環境へのテコ入れ

まず、[表示>パネル>ナビゲーションビュー]とメニューをたどると、fm文書に含まれる見出しをFMが自動抽出して表示してくれるビューが追加されています。

fm_atc1

これは段落/文字書式の設定をFMが解釈して(スマートロジックと呼んでいるらしいですが)表示してくれるもので、ワンクリックで目的の場所にジャンプすることができますし、上部の検索窓からインスタント検索を実施して対象となる部分を見つけることもできるようになっています。
FMで扱う文書は基本的に長大文書が多くなりますから、相互参照や目次などを使用せずに文書間を移動できる方法が提供されたことはグッドニュースだと感じています。
ただ、現在のバージョンでは表示される項目をコントロールする方法を見つけることができませんでした。ビューに表示する項目のコントロール方法が提供されれば、より使い道が広がるように思うので、これから先のアップデートに期待するところです。
次に、[ファイル>ユーティリティ>Split Current Document]とメニューをたどると開いているfmファイルを任意の段落書式で分割してくれる機能も追加されました。

fm_atc2
fm_atc3
fm_atc4

分割の際には設定した段落書式の内容がファイル名に設定され、自動的にブックファイルとしてまとめられます。
これもFMを使用する際にありがちかもしれませんが、当初設計したファイル分割のレベル(粒度)を後になって変更したいと感じることがあります。
そのような時、これまでは一つずつ「名前を付けて保存」する作業を繰り返し、後でブックにまとめる作業を行なう必要がありましたが、それをメニューから一発で実施できるようになりました。
そのようにして面倒な作業を一括で実施してくれるという点では、FMでブックファイルを開くと、ブックメニューの中に[Book Utility]という新しいメニュー項目を見つけることもできます。その中にはブックに含まれているすべてのFMファイルを一度mifファイルに保存して、もう一度fmファイルに保存しなおす作業を一括で行える[Book MIF Wash]という機能が実装されています。
MIF Washは、使用中のfmファイルの挙動が不安定になったり、FMが異常終了したりする状況がみられるときにユーザーが行っていた作業です。対象のfmファイルを一度mif形式で保存することにより、そのファイルの履歴情報や複雑な設定項目などが削除されるので、その状態でもう一度fmファイルとして保存すると不具合が解消されることがありました。いわばファイルを「洗ってきれいにする」感覚のため、mif washと呼ばれるようになったようです。
これも、これまでは一つずつ「名前を付けて保存」を用いてmif形式にしてから、もう一度fm形式に保存し直す作業を繰り返す必要がありました。
機械的に処理できる単純作業をFMが実施してくれるので、ユーザーはより生産的な作業に取り組むことができます。
このように、今回のアップデートには、ユーザーにとって痒い所に手が届く機能拡張が盛り込まれていると感じています。

次回に続きます。